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越境ECとは?始め方や注意点、メリット、市場規模など気になる点を徹底解説

越境ECとは?

EC市場の拡大を受けて、日本国内でも「越境EC」の構築を検討する企業や事業者も多くなりました。ターゲット層を海外に見据えた越境ECを展開する際、国内ECとは異なる施策も必要です。

この記事では越境ECの概要や種類、注意点や市場規模、メリット、デメリット、構築方法や始め方を解説します。

越境ECとは?

越境ECとは?

ECとは日本語で「電子商取引」と訳され、インターネット上での売買取引全般を指します。ECといえば、一般的にオンラインショップ(ECサイト)での買い物やオークション、フリマアプリでの取引などを指す場合が多いです。

ECの規模は国内だけにとどまらず、国を越えた層もターゲットとする越境ECを展開する企業や事業者も増加傾向にあります。越境ECの概要や種類について解説します。

ECについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

【2022年最新版】EC(Eコマース)とは?わかりやすく解説!

越境ECの概要

越境ECとは、国境を越えて行われる電子商取引を指します。インターネットを活用することで、場所や時間の制約を受けずに取引が可能となりました。ECサイトでのターゲット層を日本国内のみとするのではなく、海外へ向けて商品を販売するために構築されるのが、越境ECサイトです。

越境ECサイトはターゲットを海外の顧客としているため、以下の特徴があります。

  • 日本語以外の言語に対応している
  • 日本円以外の通貨に対応している
  • PayPalなど海外でメジャーな支払方法に対応している
  • 海外発送に対応している など

越境ECの種類

日本国内の消費者向けのECサイトと同じように、越境ECサイトもさまざまな構築方法があります。おもな越境ECの種類を紹介します。

自社EC型

自社で構築、運用する越境ECサイトです。国内向けECサイトと同じく、ASP型、パッケージ型、オープンソース型、フルスクラッチとさまざまな構築方法があります。ASPやパッケージのなかには越境ECサイトの構築に特化したカートやプラットフォームの提供や、機能の追加に対応しているものもあります。

モール型

越境ECの運用が認められている、海外現地のECモールに出店して商品を販売する方法です。日本の代表的なECモールにはAmazonや楽天、Yahoo!ショッピングなどがありますが、欧米ではAmazonやeBayなどのECモールに出店することで越境ECを行なうことができます。中国では天猫国際(Tmall Global)や京東全球購(JD Worldwide)などが、越境ECが認められている代表的なECモールです。

保税区活用型

中国を対象とした越境ECの中には、保税区を活用したものもあります。中国現地の保税区に倉庫を設け、ECサイトで商品が購入されたら、倉庫から商品を発送します。現地に商品倉庫を設けることで日本国内からの発送が不要です。顧客へスピーディに商品を届けられる、配送料を抑えられるなどのメリットが得られます。

代行販売型

海外への代行販売を行う業者に商品を買い取ってもらい、代行業者を通じて海外の顧客へ商品を販売・発送する方法です。越境ECサイトを構築しなくても、越境ECの運用ができるほか通貨や配送、言語などの越境ECの障壁となる要素も排除しやすいメリットもあります。

ただし代行業者への手数料や配送料がかかるため商品価格が上昇する、やり取りを行うのは代行業者のため顧客情報が手に入らないデメリットがあります。

越境ECの現状と市場規模

越境ECの現状と市場規模

インターネットの普及や顧客ニーズの多様化により、越境ECの市場規模は拡大傾向にあります。越境ECの現状を踏まえた、国内外での市場規模を解説します。

海外での越境ECの市場規模

経済産業省発表の「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」内の「日本・米国・中国の3か国間における越境電子商取引の市場規模」の調査結果によると、日本・米国・中国の3か国間での越境ECの市場規模は、いずれの国の間でも拡大傾向にあります。

米国の消費者による日本・中国事業者からの越境EC購入額…1兆5,570億円(2019年)、1兆7,108億円(2020年)、2兆409億円(2021年)で、前年比19.30%増

中国の消費者による日本・米国事業者からの越境EC購入額…3兆6,652億円(2019年)、4兆2,617億円(2020年)、4兆7,165億円(2021年)で、前年比10.70%増
※日本事業者のみからの越境EC購入額は2兆1,382億円(2021年)で前年比9.7%増、米国事業者のいの越境EC購入額は2兆5,783億円(前年比11.5%増)

日本での越境ECの市場規模

米国と中国と比較すると人口数の少ない日本は、おのずと越境ECでの購入額も低くなります。ただし、日本の消費者が越境ECを通じて購入した金額も3年連続で増加しているため、日本国内でも越境ECの市場規模は拡大傾向にあると言えるでしょう。

日本の消費者による米国・中国事業者からの越境EC購入額…3,175億円(2019年)、3,416億円(2020年)、3,727億円(2021年)で、前年比9.10%増

越境ECの始め方・仕組み

越境ECの始め方・仕組み

越境ECを始めるためには、商材や目的、ターゲット、コストなどに合わせた構築方法を選ぶ必要があります。越境ECの仕組みをふまえた、構築方法別の始め方を解説します。

日本国内のECモールに出店

日本国内の越境ECが認められているECモールに出店する方法です。おもな日本国内のECモールには、以下のものがあります。

  • Amazonジャパン
  • 楽天市場
  • Yahoo!ショッピング
  • PayPayモール
  • ZOZOTOWN
  • au PAY マーケット など

また、Amazonジャパンは日本貿易振興機構(JETRO)と提携し、Amazonの米国向け越境ECサイト「JAPAN STORE」の出品支援プランも展開しています。(2023年3月までの予定)

メリット

  • ECサイトの構築が簡単にできる
  • 有名なモールならある程度の集客が見込める
  • サポートが充実している

デメリット

  • ECサイトのカスタマイズ性は低いため、ブランディングには向かない
  • 出店料やシステム利用料などの固定費が発生する
  • 顧客情報を収集しにくい
  • 競合が多いため価格競争が起きやすい

海外の現地ECモールに参入

海外の現地ECモールに参入し、ECサイトを出店する方法です。おもな海外現地のECモールには、以下のものがあります。

  • 中国…天猫国際(Tmall Global)、考拉海購(Kaola)、京東国際(JD worldwide)
  • 米国…eBay、Amazon、Walmart
  • シンガポール…Shopee
  • 台湾…PChome
  • タイ…Lazada Thailand
  • 韓国…G-Market
  • 英国…John Lewis
  • ドイツ…Otto、Zaland

海外の現地ECモールで越境ECを出店するメリットとデメリットをまとめました。

メリット

  • 規模の大きいECモールなら集客が見込める
  • 日本の事業者が少ないECモールなら競合が少ない
  • 日本の事業者の出店に前向きなECモールもある
  • アジア圏の現地ECモールはターゲットにしやすい層を集客できる

デメリット

  • 出店審査が厳しいECモールがある
  • 出店手続きやサポートは現地の言語で行う必要がある
  • 出店料や利用料などの固定コストがかかる

自社ECサイトを制作

自社で越境ECサイトを構築する方法です。おもな方法には以下のものがあります。

  • ASP型プラットフォーム(MakeShop、カラーミーショップ、Shopifyなど)
  • オープンソース
  • クラウド型EC
  • パッケージ型
  • フルスクラッチ

Shopifyとは?世界シェア最大級の評判から見る特徴や基本機能、メリット・デメリットを紹介します

自社で越境ECサイトを構築するメリットとデメリットをまとめました。

メリット

  • カスタマイズの自由度の高いECサイトを構築できる
  • 翻訳や通貨などECサイト運営に必要な機能を追加できる
  • 越境EC向けの発送や決済方法を追加できる
  • オープンソースの場合はコストをおさえて構築できる
  • ASPやクラウドECは自社サーバー不要で立ち上げられる

デメリット

  • ECサイト構築やデザインの知識が必要
  • 構築方法によってはソースコードの管理ができない
  • 構築方法によっては自社サーバーやメンテナンスが必要
  • 構築方法によってコストが高くなる

越境ECの注意点

越境ECの注意点

越境ECサイトを構築することで、新しい販路の確保や利益の向上にもつなげられます。一方で国内ECサイトとは異なる対策方法も必要です。越境ECを構築する前に知っておきたい注意点を解説します。

取り扱う商品やサービスのニーズが合っているか

日本製品は品質の高さから、海外からも人気があります。コロナ禍前は日本の製品を爆買いするインバウンド需要も高くなっていました。

ところが、日本で需要のある商品やサービスが、かならずしも海外で需要があるとは限りません。国内ECで売れ行きの良い商品やサービスも、海外では全く売れないということがあります。越境ECを構築する前に、海外の商品やサービスのニーズについても踏まえておきましょう。

また、日本国内・海外現地両方ともECモールで越境ECサイトを出店する場合、ECモールによって得意としている商品やサービスのカテゴリが定められている場合があります。

たとえば日本でいうならば「ファッション系やアパレル製品ならZOZOTOWN」のようなイメージです。販売する商品やサービスと相性の良いECモールを選ぶ必要があることを覚えておきましょう。

配送料や手数料が高くなってしまう

海外現地で倉庫を持って商品を発送する「保税区活用型」のECサイトを除き、商品の発送は日本国内から行います。そのため国内への発送と比較すると発送量や手数料が高くなるのがデメリットです。

参入先の国によって法律やルールが異なる

越境ECでは、ターゲットとする国の法律やルールに合わせた対応が求められます。たとえば中国ではインターネットサイトの開設や運営は許可制で、「ICP」と呼ばれるライセンスが必要です。ICPライセンスを取得せずサイトを開設し、発覚した場合は違法行為としてサイトの運営停止措置を受けるだけでなく、罰金などのペナルティも科せられます。

法律やルールを理解していなかったことで、トラブルに発生する可能性もあります。海外と日本では法律やルールが異なることをふまえて、ECサイト開設前に事前の調査や対策を行っておきましょう。

為替相場による売上の変動

越境ECでは、日本円ではなく現地通貨によって取引が行われます。為替相場によって利益にも影響が出る点に注意しておきましょう。たとえばドルで取引を行う場合、円安では売上のドルを円に換金するときに受け取る金額がアップするため売り上げのアップにもつながります。

ところが円高の場合は、売上のドルを円に換金する際に受け取る金額が大きく下がってしまい、売り上げもダウンしてしまいます。取引を行う通貨と日本円の為替相場を確認しながら、ECサイト運用を行なうことが重要です。

越境ECのメリット・デメリット

越境ECのメリット・デメリット

越境ECを展開することで、多くのメリットも得られる一方でデメリットもあります。越境ECサイト構築前に知っておきたい、メリット・デメリットを解説します。

越境ECのメリット

越境ECを運用することで得られるメリットを順に解説していきます。

海外での販路や商圏の拡大

越境ECによって海外の顧客をターゲットにすれば、日本国内にとどまらず商圏を海外まで拡大できるメリットがあります。日本国内は少子高齢化が進み、消費者人口の減少も予想されていますが、海外も商圏に入れることでより多くの利益を得られるでしょう。

日本の商品を求めているけれども手に入らないなど、日本の商品へのニーズが高い国や潜在顧客の見込める国をターゲットにすることで、新しい顧客の発掘にもつなげられます。

実店舗よりも出店コストが低い

越境ECを構築することで、海外現地で直接出店するよりもコストをおさえて海外進出が実現します。海外で出店する場合には家賃や現地スタッフの人件費のほか、出店のための手数料などがかかります。越境ECサイトなら、サイトの構築費用のみで出店が可能です。

実店舗よりも運用しやすい

海外現地で出店した場合は、売上や在庫管理、現地スタッフの教育など店舗運営のための業務が発生します。また、現地スタッフだけでは店舗運用ができない場合は、出展者みずからが現地に赴く場合もあります。

越境ECの場合は、日本にいながらインターネット上で海外の消費者とのやりとりができるのがメリットです。売上や在庫管理などの業務も日本国内で完了します。サイトを運用しやすいのも、越境ECサイトのメリットです。

リピート需要をつかめる

日本を訪れた海外旅行客や出張客が、日本で購入した商品をリピート買いするためにECサイトを利用するケースも多いです。また、日本のお土産を受け取った人が「自分でも購入したい」とECサイトを利用することもあります。

越境ECサイトを展開することで、新規客だけでなくリピート需要もつかめるメリットがあります。

新規の顧客開拓ができる可能性がある

日本国内ではEC市場は拡大しているため、ECサイト運用も競合よりも優位に立つための施策が求められます。一方、越境ECサイトの場合はまだ日本企業や事業者が進出していない国をターゲットにすることで、競合が少ない新規の顧客を多く開拓できる可能性があるのがメリットです。

越境ECのデメリット

越境ECには多くのデメリットもあります。「注意点」で前述した内容も含めておさえておきたい、越境ECのデメリットを解説します。

国や地域ごとの対応が必要

ターゲットとした国や地域に合わせた言語での対応が必要となります。ECサイト内の翻訳や、問い合わせなどの顧客への対応で通訳が必要になるケースも多いです。また、マーケティングや集客への施策も国や地域によって異なる対応が求められます。

トラブルが発生するリスクがある

決済や発送に関するトラブルが発生する可能性があります。海外発行のクレジットカードを決済に使うケースが多くなるため、日本国内での決済よりも不正利用などのトラブルが発生する可能性も高いです。

また、日本国内から海外へ所品を発送するため、発送にかかる時間も長くなります。その分、発送中の荷物の紛失や破損などのトラブルが発生する可能性も高くなるでしょう。

貿易や関税の手続きが必要

越境ECサイトを通じて商品が購入されると、日本から商品を海外へ向けて発送しますが、これは「輸出」にあたります。商品を輸出するためには以下の手続きが必要です。

  • INVOICEの作成
  • 船便または航空便の手配
  • 対象国に応じた関税の算出と徴収

また対象となる国や地域によっては、輸出が禁止されている物品もあります。たとえば中国では古着の輸入が禁止されていて、中古機器は輸入の際に現地確認が求められます。貿易や関税に関する手続き方法を身に付けるとともに、自社の商材が販売できる国や地域をターゲットにすることも重要です。

物流システムが構築されていない場合がある

日本国内で商品のやりとりを行う場合、商品倉庫から出荷された商品や配送業者などの手によって消費者の元へ確実へ届けられるように物流のシステムが構築されています。一方、ターゲットとした国や地域によっては、日本のように堅牢な物流システムが構築されていない場合もあります。

日本企業による越境EC事例

日本企業でも、越境ECを展開している企業は増加傾向にあります。越境ECを展開する日本企業の事例を紹介します。

Fake Food Japan

Fake Food Japan」は、キーホルダーやUSBメモリ、スマホケース、ヘアゴムなどさまざまな食品サンプルのアイテムを取り扱っているECサイトです。日本の食品サンプルは海外からの人気も高く、日本での出張や旅行のお土産として購入する外国人旅行客も多いです。日本まで足を運ぶ必要なく、さまざまな食品サンプルのアイテムを気軽に購入できる越境ECサイトとなっています。

取り扱っている食品サンプルも、一般的な洋食のほかに寿司や天ぷらなどの日本食もあります。オーダーメイドでの注文も可能です。言語は日本語と英語に対応、決済方法もクレジットカードをはじめPayPalなどにも対応しています。

GLOKEN

GLOKEN」は、長野県松本市にある、一般社団法人グローバルけん玉ネットワークが運用する越境EC
サイトです。初心者から上級者までレベルで選べるけん玉や、けん玉ホルダーや替え紐などのアクセサリー類、Tシャツやけん玉関連の書籍などのグッズを取り扱っています。

日本国内向けのECサイトと、海外向けの越境ECサイトを完全に分けているのも特徴です。越境サイトはすべて英語仕様となっています。越境ECサイトは全体的にスタイリッシュなデザインとなっていて、けん玉に興味のある海外ユーザーも目的の商品を探しやすくなっています。

Kakimori

Kakimori」は、「たのしく、書く人」をコンセプトに万年筆やガラスペン、付けペン、インク、ノートやレターセット、さらに机周りのアイテムを取り扱っているECサイトです。ものづくりの街工場が多い東京の下町から、丁寧に仕上げられた「書くもの」を作り、販売しています。

品質の高い日本のものづくりに裏打ちされたアイテムは、海外からも高い評価を受けています。既存のアイテムはもちろん、ノートやインクのオーダーメイドも可能です。ペンのインクとノートをテーマにした温かみのあるサイトデザインも魅力。商品が購入できるだけでなく、お手入れ方法や洗浄方法を分かりやすく説明したページもあります。

越境ECに関するまとめ

越境ECに関するまとめ

越境ECの概要や構築方法、メリットやデメリット、越境ECサイトを展開している日本企業の事例を解説しました。インターネットの普及だけでなく、コロナ禍によるEC需要の拡大、さらに円安も追い風となり越境EC市場は拡大傾向にあります。越境ECサイトを展開することで、国内では得られない新しい販路や顧客の開拓と、利益の向上にもつながるでしょう。

越境ECサイトの構築には、言語や決済方法の選定など国内ECサイトとは異なる施策も必要です。関税や輸出への知識やリスクを防ぐためのセキュリティの構築も求められます。越境ECサイトの構築についても、ぜひ、チームNext!にご相談ください。海外のユーザーを獲得できる魅力のある越境ECサイト展開をぜひ実現しましょう。

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